この一冊:『ねこはしる』工藤直子

『ねこはしる』工藤直子

動物や木々が人間以上に慈しみを持っていると感じている人は少なくないかもしれない。工藤直子さんも、きっとそういう人のひとりだ。

慈しみと書くと、慈愛の精神のようにおもってしまうけれど、それは自他の境目があいまいな感じ。「私は私」とよく人は言うけれど、その私と差されたものを明確に言及することができるだろうか。

この話は『ねこはしる』とは全然関係がないのかもしれない。ただ工藤直子さんの本には、そういった、曖昧な自分と世界の淡い境界線しかないのだと、おもわせる動物や草木がよく登場する。というか、人はあんまり登場しない。(私の知ってるかぎり)

端的に言うと、知らない世界があるのだなあとおもうけれど、そんな言葉では回収できない、他人が他人でない、淡い世界をおもう。

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